7/24 北京で大規模デモ⁉中国ニュースを追ってみた

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大規模デモが北京で起きたなんてビックニュース!?

7/25の朝、つまりさきほど、テレ東のニュースを見ていたら、短い中国のニュースが流れた。

「昨日の夜、北京で大規模デモが。ある団体の代表が拘束されたことに抗議するもの。デモ参加者は政府によって、大型バスでどこかへ移送された。」

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などという内容だった。

え!北京でデモなんて珍しいな、もしかして民主化に関係したデモ?だとしたらすごい大きなニュースじゃないか、と思い…

 

 

デモ参加者はマルチ商法を行っていた団体の会員

日本で、さらにニュース検索してみると、朝日新聞が7/25付で詳細を報じていた。(記事はこちら

「厳重警備の北京で大規模デモ 団体代表の拘束に抗議
北京2017年7月25日00時27分

中国公安当局は24日、広東省深圳の団体「善心匯」のメンバーが北京市内で違法集会を開いて社会秩序を乱したとして、集会を解散させ一部のメンバーを連行したと発表した。メンバーは同団体の代表が、マルチ商法の疑いで拘束されたことに対して抗議集会を開いたという。数千人が参加したとの情報がある。

北京では今秋の党大会を控え警備が厳重化されていた。こうした中での大規模な抗議活動は異例。ネットの映像などによると、メンバーは市内の地下鉄の駅周辺に集まり、横断幕などを掲げて公安当局への抗議を示したという。(北京)」

…ん?マルチ商法?

なんだその団体は…そんな結束強いの?代表連れてかれたらデモするくらい?

 

なんか、初めに考えた民主化に関するデモではなさそうだ。ましてや、「劉暁波氏の死を受けて香港民主派によって行われたデモと同じようなものが、北京で行われた」なんてことは全くなかった。

しかし、党大会を控えて厳戒態勢の北京で、このようなデモを開いたという点で、この団体のもたらした影響は大きいのではないだろうか。

この団体がどんなものであろうと、要求がどんなものであろうと、(犯罪者集団であったとしても)「公に政府に対して抗議する」という選択肢が中国でありうる、ということを皆に示したことにならないか。

 

中国のニュースを見てみよう

そこで、中国国内でこのニュースがどのように国民に受け取られているのか気になった。そこで、中国のツイッターである「微博(ウェイボー)」と大手ネットニュースの「腾讯(テンセント)新闻」を調べてみた。

 

どちらも、議論のもとになる記事本体は同じ内容だった。

北京警察の公式発表の内容がそのまま載せられている。だいたいの意味を翻訳してみた。(原文はこちらから)

「警察による警告:扇動や、人を組織して不法に集まったり不法集会に参加するなど社会秩序を乱す違法行為は、法律によって罰せられる。中国公安関係機関は法に依り、各種違法犯罪行為に厳しく対応(原文では攻撃)し、法にかなった人々の利益を守り、社会秩序の維持に役立てる。」

という前置きのあとに、この度の事件に関する発表が続く。

「近日、公安部統一部署は、法に依り、深セン市の善心汇传播有限会社の代表人・張天明などの者に対し、人を組織しマルチ商法犯罪行為を導いた嫌疑で捜査した。張天明など多くの容疑者にはすでに、法に依って刑事罰が科された。

2017年7月24日、”善心汇”の一部会員は、意図ある者に扇動され、北京で不法な集会を行った。この行為は法に触れる疑いがあり、公安機関は警察を組織し法に依り秩序維持を行い、人々の安全を確保し、集会に参加した者に対して秩序をもって現場を離れるよう勧告した。あわせて、騒動の先導者や、当局に従うことを拒んだ者を法に依り強制連行し取り調べを行った。

警察による警告:……(上の前置きと同じ内容。ここの抜粋だったようだ)。」

 

これが、政府公安による正式な報告というか報道。

ちなみに、マルチ商法と訳したのは、中国語で「传销活动」。ネット民たちは「传销」と言っていた。日本語での「マルチ」同様に、良い印象はすでに無い言葉のようだ。

印象に残るのは、何度も出てくる「依法」(=法に依って)という言葉。うがった見方をすれば、正当性を過剰なまでに強調しているようにも取れる。

 

 

人々(ネット民)の反応

続いて、このニュースを受けての人々の反応を見ていこう。

まずは、「腾讯新闻」の人々の感想。ヤフーニュースみたいに、ニュースのあとにそれを見た人の感想が寄せてあり、それを読むことができる。

このニュースの評価としては、

赞(=いいね)が451人

开心(=愉快)が198人

一般(=普通)が14人

不开心(=不愉快)が354人 のようだ。

共感(いいね)を多く集めた感想を挙げてみると、

「マルチ組織に対しては絶対手をゆるめるな、全国的な厳しい取り締まりを支持する!」

「公安の応対が速く、すぐに叩くことができた!被害が広がるのを防いだ」

「このような行為は必ず取り締まられなければならない、国家の平穏を甚だしく乱す」

など、圧倒的にこの公安の措置に賛同する声だった。それだけ、このマルチ商法集団は悪名高いようだ。

 

また、「微博」でもこのニュースは話題になっていた。

やはりまずはこのデモを行った集団への嫌悪、公安のこの措置への称賛の声が目立つ。

そこからマルチ商法の批判に発展し、議論が繰り広げられていた。

「この手のマルチが多すぎる、ほんと取り締まりが追い付かない。騙されるのは40~50代の中高年。…(略)」

「ある人は騙されて警察に通報したけど、証拠不十分と言われた。証拠が揃うのを待ってたらみんなのお金ほぼ全部騙されつくすよ!」

「早く”安化黑茶传销”組織(筆者注:別のマルチ商法団体のよう)を捜査して。私の家族、親戚、友達みんな彼らに洗脳されちゃったよ。…(略)」

 

 

マルチをめぐり深まる議論

マルチ商法に憤る声に加え、マルチ商法に関わった(騙された)人たちに対してこんな意見も あった。

「なんで俺らがお前らの尻ぬぐいをしなきゃならない。(騙される理由に)老いて脳みそが働かないから、なんて有り得ない、若者も多いからだ。学歴が良くないから、なんて有り得ない、大学生もいる。良心を利用されたから、なんてのも有り得ない、やはりこの3つでしかない。貧しい、怠け者、愚かなのだ。」

 

今回の公安警察の対応が遅すぎた、と批判する声も。

「私が知りたいのは、これは全国最大のマルチ商法案件なのに、警察はなにやってたんだということ。こんな大きな組織をこんなに長いこと放っておいた。いったいどれだけの人が損害を受けたと思ってる?あなたたちにとっては重要ではないのかもしれない、でも障害者にとっては?彼らが今後再び、どれくらいの被害にあうか分かるか。このお金は彼らの命のもと。あなたたちはそれでも政府か?これがその結果か?」

この声に対しては以下のような批判も。

「お前は、空からおもちが降ってくるのを待っている(筆者注:努力せず楽して利益を得ようとする例え)ときは、先を争ってそのおもちを手に入れようとしてたくせに、そのおもちが鉄でできていて、当たって痛かったからといって、政府がそれから守ってくれなかったと責めるのか?…(略)」

 

 

このニュース、思わぬ方向のものでした

うーん、もはや、デモがどうとか、あまり問題じゃないようだ。

中国におけるマルチ商法。というのがこのニュースの核心。

確かに日本でも昭和の頃には特に、全国を席巻するマルチ商法会社があり、大きな社会問題を引き起こした。

今では法が整備され、今でもマルチまがい商法などが存在するものの、あまり大きな事件に発展することはないような。もちろん一定数、今でも被害はあると思うが。

それが今現在、中国ではまだ隆盛をきわめる犯罪なのだろうか。

 

「デモによる政府への抗議」という日本の不十分なニュース内容から興味がわいて、この記事について調べたが、予想とは大きくかけ離れたところに着地した。

どうやら、中国では、マルチ商法という悪を、政府が取り締まりましたという構図のニュースでしかないようだ。

だれも、デモという手段に注目したり、それが政府によって強制的に解散させられた点に注目した意見を発してないように見えた。あるとしたら、デモなんて起こしてさらに一般市民に迷惑かけやがって、というようなもの。

そもそも民主化がどうとか、もしそんな要求のものなら、インターネットで記事も検索できないもんな。今回はインターネット規制はないようだった。さくさくなんでも検索できたから。

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